旅と日常のあいだ

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阿川佐和子『ことことこーこ』感想。親の介護と自分の生活と。

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阿川佐和子さん『ことことこーこ』を読んだ。

認知症が進む実母・琴子(ことこ)と、その娘である私・香子(こうこ)の物語。症状が進んで物忘れがどんどんひどくなっていく母親に加え、関係がしっくりきてない弟とその妻、仕事での失敗といったエピソードが重なっていく。すべてを一人で頑張りすぎる必要はないのに、気づいたらそういう場所に自分がいてあっちもこっちも八方塞がりな気分という、こういう日常や現実ってあるよなあ。周りの人が助けてくれない!って思うとき、実は自分が頑張るあまり無自覚に結界を張っていて、周りの人が入りこむ余地をなくしているというパターン。仕事でも介護でも日々のちょっとしたことでもそう。読みながら、〈一人で背負うな〉のメッセージを忘れないようにしよう…と思った。頼れるものには大いに頼るべし、これは我が身をもって、産後にものすごく痛感したことでもある。

香子にはフードコーディネーターという仕事があり、後半、彼女だからこそできると方法で仕事を深めていくことになる。そこに至るまでには、明るく頼れる後輩の存在が大きい。この後輩がとってもいいキャラクターで、読書中の清涼剤というか。親がぼけていくというしんどい日常に絶妙な距離感で入ってきてくれて、物語を明るくて救いのあるものにしてくれているなと思う。 香子は38歳、同世代の私としては、親の介護とか実家の建物や荷物をどうするかとか、自分の身に置きかえて考えざるを得ない年代になってきたなーと思う。あまり楽しい話題ではないよね、いつか来るとはわかっていても考えるのは気が重い。

……なんてことを考えていたこの日、夕食の時刻に合わせて炊飯器をセットし、その間におかずを整えて準備万端、ちょうどいいタイミングでピーッと鳴って炊飯完了!と思ったら、なんということだろう、内釜を入れないまま炊飯ボタンを押していた。ショックで呆然。親の老いの前に、自分のうっかりぶりを心配すべき!

ことことこーこ

ことことこーこ