旅と日常のあいだ

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伊坂幸太郎『フーガはユーガ』感想。展開の爽快感と、読後のモヤモヤと。

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伊坂幸太郎『フーガはユーガ』を読んだ。あらすじも設定も知らぬまま、なんとも不思議な表紙だなあと思いながら。

久々に読む伊坂作品、終盤の仕掛けにぞわぞわと興奮した。語り手のセリフに何度も出てくる「僕が話していることには嘘がまざっている」という言い回し、その多さや不自然さが気になってはいたが、まさかこんな形でからくりが明かされるとは。巧みだなー、おもしろいなー。これぞまさに伊坂さんらしさ!と嬉しくなった。

一方で、暴力的なシーンが多いので読むのがつらかった。悪は成敗されるってところが書かれていてそれなりにスカッとするけれど、それにしても、登場人物たちの受けた痛みが大きすぎて勧善懲悪の帳尻が合わないよ。その点はややモヤモヤ。終盤、展開が一気に加速していく構成は非常に爽快なんだけどなあ。ハッピーエンドではない部分もあり、読後感はやはりモヤモヤが多めだった。

中学時代は冴えないキャラだったワタボコリという少年の、大人になった姿が頼もしいのは読んでて気持ちがよかったな。未来は何も規定されていない。どんな方向に変わるかわからないという希望。少年時代のやりとりで「大人になって、タクシー運転手と会話しないといけないときがきたらどうするんだよ」というセリフがあるのだけど、あとからこの伏線が生きてきて胸熱。

読み終えて改めて表紙を眺めると、なんてよくできたデザインなのと思う。フーガはユーガ。「ユーガ」が左右反転なのも、後ろに「風」「優」の文字が見えていることも、なるほどなと納得。

フーガはユーガ

フーガはユーガ