旅と日常のあいだ

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7月1日には、氷室饅頭を食べるべし

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金沢周辺では、7月1日に健康や長寿を願いながら「氷室饅頭」を食べる。このあたりでは欠かせない恒例行事で、職場でも「もう氷室饅頭は予約した?」「いつもどこで買ってるの」などの会話がある。

氷室饅頭じたいは珍しいお菓子ではなくて、こしあん入りの、言ってしまえば普通の酒饅頭。白、緑、桃色の三色がスタンダードだけど、黄色や茶色のものもある。

そもそもは7月1日に行われる「氷室開き」という行事にちなんだもの。江戸時代の加賀藩では、冬に積もった雪を氷室という小屋に貯蔵しておき、7月1日に氷室を開けてこれを取り出していた。当時とても貴重だった氷を、江戸まで500km運んで幕府に献上していたらしい。庶民には氷を食べるチャンスはないけれど、氷室開きの日にこれを食べれば無病息災だぜ!という触れ込みで「氷室饅頭」と称した和菓子を売る店が現れて(商売人だなあ)、そこから7月1日=氷室開き=氷室饅頭を食べる、となったそうだ。

当時の氷室は現存していないけれど、観光と伝統保全のために建てられた氷室が金沢市湯涌(ゆわく)にあって、毎年1月に雪を詰め、6月末に取り出すということをやっている。取り出した氷を金沢と関係が深い東京目黒区・板橋区に贈っていますとニュースで紹介されていて、江戸時代の飛脚じゃあるまいし、現代ではどうやって運んでいるのか気になって、思わず観光協会に問い合わせてしまったよ。金沢から東京までは宅配便で。東京に到着した氷は、石川県トラック協会のお兄さんたちがトラックではなく長持で各区役所に運ぶんだって。

我が家で食べたのは「押野松月堂」の氷室饅頭。お酒の香りがほどよくて皮は薄く、あんはさらりとしていた。これで一年元気に過ごせますように。

▼同じような超局地的文化としては、お正月の辻占という和菓子も。

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