旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。



北極で全滅した探検隊を追う、極上のノンフィクション。角幡唯介『アグルーカの行方』

f:id:lovestamp:20180612091357j:plain

「アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極」角幡唯介

フランクリン隊は、19世紀の北極圏で当時まだ発見されていなかった北西航路を開こうとした探検隊。その目的を果たすことなく隊員129人が全滅するという衝撃の結末を迎えたのだが、現地には、実は数人の生き残りがいたという伝説が残っている……。

この本は、ライターであり探検家である著者がフランクリン隊と同じルートをたどって彼らが見た景色、考えたこと、その行方を追おうとするもの。男2人が重さ100kgのソリを引き、雪と氷の大地を1600km、約100日かけて歩き通した記録。同じ地球上にこんな想像を超えた場所があるのかという驚き、見たことも行ったこともない場所なのにまるで自分がそこにいるかのように感じられるリアルで詳細な描写にぐいぐい引き込まれた。無事に次のポイントまでたどりつけるのか、この先に待っているのは何なのかが気になって読むのをやめられない。

旅の環境の過酷さは、それはもうめちゃくちゃに壮絶でキツそう。雪の塊が一面の小山のようにボコボコと盛り上がった中を、ソリを押したり引いたりしてわずかずつ進む、そんなことが数日間続くとか。角幡さんの唇が荒れに荒れて血がしたたり、それが凍って血のつららになるとか。空腹に耐えかね、野生のジャコウウシを狩って食べたはいいが胃痛に見舞われるとか。

難所だらけの冒険上でフランクリン隊やほかの北極探検家につながるエピソードが紹介され、それを読んでいる側は、世紀を超え場所も超えて、今いっしょに北極の荒野を旅している気持ちになるのだった。そう思わせる説得力のある筆致がすごいし、そこにときどき混じるユーモアもおもしろい。地理的に未知なる世界を知ることのロマン、隊員全滅の謎解き、そこから角幡さんは何を見たのだろうかということ、いろんな角度の楽しみが詰まっている作品だった。

結局のところ、フランクリン隊の生き残りはいたのか? 角幡さんが旅の最後に見た風景は何だったのか? ドラマチックでしびれます。超おすすめ。