旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


新年最初の買い物は文庫本。太宰治の『女生徒』

正月一日二日は外出もせず家にこもり、家族でボードゲームに熱中するうちに時間が過ぎた。年に一度、お正月にモノポリーで遊ぶのが我が家のならわしである。平和。

三日になってやっと外出。初詣にも初売りにも行かない私が、年明け初めて入ったお店は本屋さん。セールも福袋も混雑も関係ないいつも通りのテンションが落ち着くわ。そして今年最初の買い物は、太宰治『女生徒』。タリーズに直行して読みふける。

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歌人の穂村弘さんが推していたので買ったのだが、確かにこれは素敵。声に出したり書き写したりしたくなるフレーズがいっぱいあった。

少女の一人語りという手法なのだが、視点も文体も少女そのもの。少女時代特有の純粋さ、美しくないものへの敏感すぎる嫌悪、自意識過剰さ、親への反発や反省、すべて身に覚えがありますという内容だった。これを自分が中学生のときに読んでいたら世界の見え方や受け止め方が何か変わっていたのかなぁと思わせるような。太宰作品って概してそういう印象があるけれど、大人になるまで手に取ったことがなかったのだよね。そして何がすごいって、これを書いてるのは少女ではなく大人の男だということ(太宰30歳)。太宰治……あまりにも乙女すぎる。

以下引用。胸が痛むよ!

このごろの、私のいらいらは、ずいぶんお母さんと関係がある。お母さんの気持ちにぴったり添ったいい娘でありたいし、それだからとて、へんに御機嫌とるのもいやなのだ。だまっていても、お母さん、私の気持ちをちゃんとわかって安心していらしたら、一番いいのだ。(中略)お母さんも、私を絶対に信じて、ぼんやりのんきにしていらしたら、それでいいのだ。私は、きっと立派にやる。

女生徒 (角川文庫)

女生徒 (角川文庫)