旅と日常のあいだ

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死ぬまでずっと旅の途中。筒井康隆『旅のラゴス』

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筒井康隆の小説『旅のラゴス』を読んだ。文句なしで、とてつもなく面白かった。たまにこういう本に出会う興奮があることが、読書をすることの幸せ。

ジャンルやあらすじを説明するのは難しい。私には、今までに読んだことのないタイプの物語だったな。初めの章でまずびっくりする。どういう時代のどういう世界なんだろうこれは。ものの20ページで一気に引き込まれ、気づいたら主人公ラゴスと一緒に長くて壮大な旅をして、結末まではあっという間だった。

一番心に響いたフレーズはこれ。

「人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいいはずだ。」

啓発本ではありません。物語の中では押しつけがましさも説教くささもない。確かにそれこそが人が生きている意味だし、それを実現するというのはつまり終わりのない旅をすることなんだなと、妙にストンと腑に落ちた。なんだろう、この清々しい気持ちは。

手元において、ときどき読み返して大事にしたい本が増えた。うれしい。