旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


ロンドン11 わがままな病人、やさしき狩人

ロンドン旅行記第11回。 滞在四日目の夜に友人Nが発熱。迎えた翌朝にも熱は下がっていなかった、という前回の記事はこちら

 さて滞在五日目。Nを寝かせたまま、ひとまず自分の朝食を調達しに外出。すっかりおなじみとなったハイストリートケンジントン駅にあるベーカリーに行き、水やジュースやパンを買って部屋に戻る。

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ホテルのお部屋で朝ごはん。 Nは相変わらずベッドに横たわったままだが、ほかに咳とか吐き気とか痛みといった症状はない模様。何が原因かはわからないけれど感染するような性質のものかもしれないし一応マスクをしてよとNに言ったら、「マスクきらい~」との返答。おーい、わがままを言うなよ! 好き嫌いの問題じゃないだろう! 海外で寝込むという心細い状況でなかったら愛ゆえの説教をするところだが、かからなくてもいい病気にかかることを防ぐため、文句を飲みこんでマスクを装着する私であった。

寝込んでいるNはマスクをせず、健康な私がマスクをする。なんだか腑に落ちないが、自覚があるのかないのか知らんがNがうまいこと甘えてきて、私が(やむを得ず)お世話好きな一面を発揮して立ち回るっていうのが我々の定型パターンなので仕方ない。

日本語OKな病院を探して電話をかけ、先生がホテルの部屋まで往診に来てくれることになって一安心。部屋にいても私にはNのおでこに載せた冷やしタオルを取り換えるくらいしかできることがない。先生が来る時間までには戻ってくるつもりで一時間ほど外出することにした。マスクをむしり取って颯爽とおでかけ。その間にニットのカーディガンとセーターを購入した。

部屋に戻ってみると、先生はすでに来て帰ったあとだった。診察の結果は急性胃炎で、処方された薬を飲んで寝ていればじきによくなりますよと。大事でなくてよかった。様子を見るため、先生は明日の朝もう一度来てくれるとのことだった。

Nいわく「先生は親身になってくれて、いろいろと話をしてくれて、優しかった」。ハイハイそうでしょうよ、会話をしないと問診にならないし、厳しいこと言って患者を怖がらせても意味ないからな。さらにNが言うには、「先生かっこよかったなー、狩人みたいだった」。狩人!! それは獲物をねらうハンターという意味ではなくて、男性二人組の歌手のことだね? 二人のうちどちらがどんな顔立ちだったかをすぐには思い出せないほどだが、ともかくNの中では「かっこよくて優しい先生が、心細くてたまらない私のことを親身になって気遣ってくれた」という認識になっており、そのためにかなり気持ちが上向いているようであった。

弱っているところに優しくされてぽわんとなってるN。もちろん、ふさぎこんでいるよりはよっぽどいい。そうよね、旅行中に熱で寝込むわ外出もできないわでつらいよね。私ときたら、「なんで私がマスクしなくちゃいけないの、おかしいだろ!」とか「イケメン(?)先生に浮かれてないで大人しく寝てなよ!」とか、小さなことでカリカリしちゃってごめん。ちょっと余裕なくしてたみたい。反省。

しかしその直後のNの発言、「明日の朝、先生がきたら一緒に写真撮ろうかな~」を聞くにおよび、すぐさま反省を撤回した。なに考えてんの、医者と仲良く記念撮影なんかしてる場合か!! 「変かなあ。だってお世話になったし、これも思い出」とN。間髪入れずに「やめてくれ、ものすごく変だよ」と言うと、「え~、だめ?」と食い下がってくる。しかし私もここは譲らない。「どうしても撮りたいなら止めないけど、私は断じてシャッターを押さん!!」

狩人先生をめぐるそんなやりとりをしつつ、先生に指示された薬を買いに行く必要もあって再びひとりで外出。二日目に行ったケンジントンガーデンまでぶらぶらと散歩し、道行く人を観察したり、雑貨屋をのぞいて買い物をしたり。駅前にあり初日から気になっていた「わさび」というスシの店で、夕食用にいくつかテイクアウトして帰った。

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ベッドで眠るNを横目に、ひとりで食べる寿司。テリヤキチキンロールにエビフライロール。寂しかったが、美味しかった。

しかし、ということは、つまり。

ロンドン5日目(最終日)「店で夕食を食べる」=未達成

なんてこったい!!! 明日6日目は夕方にロンドンを出発し、ヒースロー空港へ向かうのである。 Nよ、どうか元気になって。 ロンドン市内のお店で夕食をとるという旅の目標は、またの未来に繰り越しということで。