旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


2013年 山梨県吉田口より富士登山(1)

これまでに4回登っている富士山であるが、今年の夏もまた登った。昨年からアルプス登山に夢中になっている私、「富士山はもう二度と登らなくていい」なんて思っていたけれど、仕事で急きょ登ることになり準備を進めていたらがぜんワクワクしてきて、なんといっても日本一の山、またあのてっぺんに立てると思うと楽しみのあまりスキップしそうな勢いに。

そんなわけで、初ルートである山梨県吉田口より、職場4人組で一泊二日の富士登山がスタート。

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富士山(3,776メートル)
2013年8月19日(月)・20日(火) 晴れ

1日目 吉田口五合目10:00-16:00八合目山小屋「富士山ホテル」泊
2日目 2:30出発-4:30吉田口山頂-5:00ご来光-朝食・お鉢めぐり-9:00下山開始-12:00吉田口五合目着
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 マイカー規制中なので、山麓の駐車場にクルマを停めてシャトルバスで登山口へ向かう。これまでの4回の登山はいずれも富士宮口ルートだったが、今回は初の吉田口ルート。

富士山頂へのルートは4つあるのだが、登山者の実に70パーセントが利用するという吉田口、シャトルバスを降りたそこは、一大観光名所であった。あたりにはお土産を売る店がズラリ。ひっきりなしにバスがやってきて、登山客もそうでない観光客も、どんどん降りてくる。これが世界遺産効果なのか、そうでなくてもこれくらいの人出なのかはわからないが、なんというか、登山という厳しい体験への緊張感を失わせる明るさだなあと思った。

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吉田口五合目から見上げる富士山(山頂は見えていない)

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山のお供といえばリカちゃんである。また連れてきてしまったよ。

吉田口は、4つある登山ルートのなかでもっとも初心者向きであるとされている。その理由は、道中に山小屋が多いから。トイレもある、食料もある、休憩もできる。「あの山小屋まで」という目標を立てやすいから、歩くモチベーションが上がるし時間配分を作りやすい。数は少ないながら診療所もある。登山道はよく整備されており、急な傾斜も岩場もほとんどない。赤茶けた土の上をジグザグに登る。

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ひたすらジグザグ。道は非常に単調である。

今回の登山は雑誌取材のため(私は登山者のモデル役である)。アングルを決めポーズを決め、写真を撮りながらの登り道。「雲が流れて青空になるまで待機」とか「軽くガッツポーズで笑顔!」とかやりながら、ちょいちょい立ち止まって進んだのがよかったんだろうな。そんなふうに少しずつ登ったおかげか、息苦しくなったり体が痛くなったりということもなく、宿泊地である八合目の山小屋までは比較的すんなり到着できた。なんと、お昼におにぎりを食べたとき以外、一度も座って休憩をしていない。立ったままちょっと息を整えるくらいで4人みんなが無事に登ってこられたのは、基礎体力の強さゆえか、仕事への責任感ゆえか。

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夕暮れのころ、山小屋前で。標高3400メートルにある小屋の名前は「富士山ホテル」。

 小屋の夕食を食べ(カレーとハンバーグとウィンナー。チーズカステラ付き!)、缶チューハイをみんなで分け、柿の種をかじり、20時の消灯を待たずに横になる。二段ベッドの上段で、隣の布団が密着して寝返りもできないほど幅の狭い寝床で。これが苦行なんだよなあ。山は好きだが、山小屋の就寝環境はどうやっても好きになれない。

私の左隣は運よくスペースが空いていたのだが、ようやくうとうとし始めた21時頃、がさがさと入ってきたのは体格の良すぎる外国人客3人組。大柄な隣人の登場によって、ただでさえ狭い寝床はたいへんな圧迫感である。窮屈な場所に身を縮めて横たわる彼らもつらいだろうが、その体の下に掛布団を踏まれている私もつらい。英語で何やら話している背中を見つめつつ、だましだまし布団を引っ張って必死の抵抗、なんとか自分の陣地を守る。奮闘する私の耳が唯一聞き取ることができた単語は、「ノープロブレム」であった。プロブレムだらけだっつうの!

午前2時の起床まで6時間、体は疲れているはずなのにちっとも眠れず、早く時間が経たないかなあと思いながら悶々と過ごす。あとで聞いたら全員同じことを思っていたそう。誰一人、よく眠れたという人はいなかった。

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午前2時半、ヘッドライトをつけて山頂を目指す。見下ろしても見上げても、同じように山頂へ向かう人の列!

山小屋から山頂までは人の流れが悪くて混雑しており、思うように進めない。この渋滞も含めて富士登山なのよねと、既にあきらめの境地である。列の折り返し地点には「監視員」の腕章を付けた人が立っていて、「ツアー客は左!個人客は右!」と誘導している。また別の地点では、「焦らないでくださーい! ご来光までは時間があります! 必ず間に合いますから焦らないようにー!」と声を張り上げている。

そう言われても焦っちゃうよと思いつつ、無事に山頂へ到着。さすがに感無量。ご来光を見るのにいいポジションを確保し、あとは日の出を待つばかりである。