旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


2013夏 北アルプス、西穂高独標とピラミッドピーク

2013年初の北アルプスは、西穂高。 先月登った北岳(2013夏 南アルプス、北岳~間ノ岳(1) - 旅と日常のあいだ)がヘビーすぎて疲れ切ったので、今回のテーマは「とにかく楽をすること」。西穂高を選んだのは、何もしなくてもロープウェイで標高2,156メートル地点まで運んでもらえるからである。ステキ!しかも、今回は山頂を目指さない。山頂までのルートは危険な岩場が続くため初心者が踏み入ってはならないゾーンなのだが、その手前にある小ピークには「独標(どっぴょう)」の名がついており、熟練者以外はまずここをゴールとするのが一般的なのである。

楽をしたい理由はもうひとつあって、急きょ、この西穂高の二日後に富士山に登ることが決まったからである(仕事)。というわけで、「頑張らない」を合言葉に、久々の日帰り登山がスタート。しかしあまりの絶景に、案の定というか予定外にというか、ちょっと頑張ってしまったのであった。

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西穂高岳 独標(2,701メートル)、ピラミッドピーク(2,740メートル)
2013年8月17日(土) 晴れ

新穂高ロープウェイ「しらかば平」駅8:15-8:25「西穂高口駅」9:00-10:00西穂山荘10:20-12:00西穂高独標12:30-13:00ピラミッドピーク-13:30独標-14:00西穂山荘14:20-15:10西穂高口駅
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夜に静岡を出発し、途中のSAで仮眠しながら新穂高ロープウェイの乗り場に着いたのは午前8時。ロープウェイの駅は山麓と中間の二つがあるのだが、山麓に駐車しようとしたら係員のおじさんに「登山?だったら中間駅の方が便利だよ」と教えられ、言われるままに中間の「しらかば平」駅へ。駅のパン屋さんでお昼ごはんを調達してから始発のロープウェイに乗り、ゴンドラ内から槍ヶ岳やら西穂高山頂やらを眺めて「わー!たかーい!」とか言ってる間に終点の山頂駅に到着。そこは早くも標高2,156メートルの世界、おお、なんという楽ちんさであろうか。

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展望台や周辺の散策路は観光客でにぎわっているが、少し歩くと人の数がぐっと減る。そして登山道への入口があらわれる。さていよいよ登山開始。楽ちんなのはここまでか。

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しばらくは森の中。木道があったりして整備されている。たまに視界が開けて山々が見える。たいした傾斜ではなく、おしゃべりしながら小一時間ほど歩く。

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山小屋・西穂山荘に到着。目をひかれたメニューは「冷やし甘酒」(でも飲まなかった)。このあたりから森林限界となり、背の高い木が消えて日差しが強くなる。

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途中、もっとも気持ちが高揚したのがこの景色。高いところに向かって目指すべき道がしっかり見えていて、その先には空しかないっていうこの眺め、この中をこれから歩いていくんだなあと思ったら楽しみでたまらなくなり、思わず走り出しそうになるほどである。そんな気持ちになるとは自分でもびっくりなのだが、なにしろこの手の稜線に萌える!

徐々に傾斜がきつくなり、細かい石の歩きにくい道に少々疲れながらも順調に進む。山頂直下は急な岩場なのだが、登る人と降りる人で渋滞が起こっており、せまい足場に待機しながらの登りとなった。そういえば土曜日の登山ってこれまであんまりなかったな、こんなに混むのか!と思いながら、最後の岩場を登りきる。

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上部の平らに見えるのが独標。立っている人が見える。そこまでの急な岩場!

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独標に到着。せまい場所なのでゆっくりできない。

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上高地方面を見下ろしたところ。白く光るくねくねは梓川の流れ。ああ~。来月また行けるかなあ。上高地、それからその奥の北アルプスへ(わくわく)。

当初の予定ではこの独標をゴールとして折り返すつもりだったのだが、この先に続いている景色を見たらもう少し進みたくてたまらなくなってしまった。ここまで順調なペースで、時間も体力も余裕がある。山頂までは高難度なので行けないが、途中のピラミッドピークまでなら行けそうだということで、思い切って一歩を踏み出したのだった。

西穂高独標から山頂までは12のピークがぎざぎざと続いており、山頂から数えて8つめが「ピラミッドピーク」。名前からしてカッコいいが、鋭角にとがったシルエットもカッコいいのである。

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独標にいたるまでの道はなかなかスリリングだった。一か所、足一つ分も載らないくぼみをステップにして、大きな岩を横ばいで超えていくという、ものすごく緊張する場所もあった。ここで踏みはずしたらどこまで落ちるのやらという恐怖。西穂高山頂までは熟練者向き!というけれど、こういう場所がたくさん続くのだろうなと思うととても挑戦する気にはなれないわ。

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その一か所を除いてはとくに怖い場所もなく、ピラミッドピークに到達。 いやあ、満足! その後ろに見えているのが西穂高山頂であるが、今日はここまで。

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ピラミッドピークから見た景色。奥穂高、吊尾根、前穂高。

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同じくピラミッドピークから、今歩いてきた道を見下ろしたところ。丸いのが先ほどまでいた独標である。もうあんなに低く見える。そこから赤いラインをたどって、ああ、自分の足で登ったんだなあという達成感が。

しばし気持ちよさに浸ったのち、来た道を戻って独標、西穂山荘、登山口へ。登山口直前は地味な登り坂になっていて、最後の最後で疲れた(というか飽きた)。ロープウェイの駅に戻る頃には雲がわいており、先ほどまでいた西穂高への稜線は見えなくなっていた。

計画どおりの楽ちん登山で身体のどこかが痛むこともなく、しかも計画よりも先のピラミッドピークまで行くことができたので充実感は倍増。静岡からだとロープウェイ乗り場までが遠いという難点はあるが、これは実にいいコースだなと思った。おすすめです。

さて二日後は、富士山だよ! 下山直後にはこれっぽっちも自覚のない筋肉痛が、まさか一日もしくは二日後に時間差で襲って来るつもりではあるまいなと怯えつつ。