旅と日常のあいだ

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2012秋 北アルプス、槍ヶ岳登山(3)

槍ヶ岳、登山記録の3回目。前回の記事はこちら

 

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槍ヶ岳山荘に到着してお昼ごはんを食べ、小屋に荷物を下ろしてしばし休んでから槍ヶ岳の山頂をめざす。小屋を出てすぐの場所が登り口であり(写真左下の人がいるところ)、山頂までの距離はたったの200m。しかしこの200mを往復するのに一時間がかかるといえば、どれくらい急でヒヤヒヤするルートなのかがおわかりになるかと。

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山頂はもやの中。雨は降っていない。眺望は期待できないが、でも登る。槍の穂先(山頂)まではずっと岩場である。ピンが打ち込まれていたりクサリが掛けられているので、これを使って少しずつ登る。

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 いったいどこをどうやって?というような登り。途中、今までのどの登山でも一度も感じたことのなかった、「高さへの恐怖で足がすくんで進めない」という状態になる。右手を動かして、右足だけ動かして、次に左足を動かして、左手を動かしてと、動きのひとつずつ、一歩ずつを確かめながら進む。

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最後に現れる長いハシゴ。垂直。これを登りきると山頂。

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到着! しかし霧の中なので視界はゼロ、真っ白でまわりが何も見えん!! 

登頂の達成感はあるものの、景色が見られず残念。午前中が見事な快晴だっただけに、天候の変化が恨めしいが、仕方がない。切り立った岩場をそろそろと下り、再び小屋に戻ったのだった。その後も晴れたり曇ったり、青空が見えて光が射したかと思えば、また霧が上ってきてあたりが真っ白になったり、というような天気だったのだが、ちょうどもろもろのタイミングが重なって貴重なものを見ることができた。ブロッケン現象である。

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右下に、宙に浮いたような人影があるのがわかるかしら。影の周りには虹色の輪ができているのだけど、それは写真ではわかりにくいな。背後から光が当たった時、自分の前にある霧がスクリーンになって自分の影が写る、というのがブロッケン現象槍ヶ岳と一緒に。

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そのうちに日が沈む頃になり、山肌が赤く染まっていった。うっすら夕焼け色の空に白い月。刻一刻と変わる空の色に目を奪われる。槍ヶ岳は絵になるなあ。

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この日の夜ごはんは山荘で用意してもらった。豪華でびっくり。品数も多いし。山小屋でいただくあたたかい味噌汁は、間違いなく至高の一杯である。

山小屋の前にはテーブルが置いてあって自由に使えるのだが、そこで、昨日からちょくちょく顔を合わせる関西おじさんチームの面々とまた会った。その中のひとりである芋山さん(仮名)が、「おう、しるこのねーちゃんやないか」と。おじさんチームは計7名で、今朝、同じ山小屋を出発した後、芋山さんを含む3名はここ槍ヶ岳へ、ほかの4名は別ルートを行ったのだそう。芋山さんはずっとテーブルで過ごしており山頂に登る気配がない。登らないんですかと聞くと、「もう何度も登っとるから、登らんでええ」とのこと。芋山さんの話がまた面白くて、あれこれしゃべったり一緒に写真を撮ったり、しまいには名刺までいただいて「近くに来るときは連絡して」と。その言葉を真に受けて、槍ヶ岳から2カ月後、本当に芋山さんに会いに行くことになる(竹田城めざして兵庫旅3<山男と再会、そして皿そば> - 旅と日常のあいだ)ちなみに芋山さんたち3名とは、この日のベッドが隣同士だった。どこまでもご縁がある。