旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


女ふたりの熱海旅。B級エロスな秘宝館にやられっぱなし

友人Sちゃんと熱海に行ってきた。

静岡の私と東京のSちゃん、それぞれの住む場所からだいたい等距離だから、というのがその理由だ。かつて新婚旅行のメッカだったとか百万ドルの夜景がきらめくとか、そこはかとなく昭和の香りが漂う温泉地、熱海。果たしてそこは、美味しい魚、青い海、こじゃれたカフェ、そして傾きかけたアダルトムードが渾然一体にからみあう町であった。

あそこに行ってー、あれ食べて―、って感じで、計画どおりに熱海のいいところを満喫。駅前では足湯に浸かって軽く歩行浴もしちゃったり。デッキが整備された明るい海岸沿いをぷらぷら散歩したり。「天匠」という和食屋で美味なる天ぷら&塩辛をいただいたり。「起雲閣」という旧別荘に飾られた文豪パネルを見ながら<イケメン文豪選手権>をやったり(1位は文句なしで三島由紀夫。2位は太宰治志賀直哉かで意見が割れた)。

いや~、なかなかいい感じに回れてるね~、いいねいいね~ってなノリの午後3時過ぎ。まだ時間もあるし、やっぱりネタ的にあそこは行っとく?ってことで、我々はロープウェイのりばに向かった。目的地はこの崖の上。ゴンドラで運ばれたその先には、けばけばしい飾り文字で「秘宝館」と書かれた建物がそびえたっていた。嗚呼、秘宝館! それは、秘密のベールに覆われた魅惑のアイテム(18歳未満お断り)がひしめく妖しいミュージアム。噂に名高いヘンテコっぷりを確かめに、我々は意気揚々とチケットを買ったのであった。恥じらいなんて熱海湾に投げ捨ててやったわよ。

で、秘宝館。入口のおじちゃんに「笑いながら見てね~。真剣に見るとバカらしいから」と身も蓋もないアドバイスを受けつつ入館する。以下、どこまでが現実でどこまでが夢だったのか判然としないミラクルワールドが延々。絡み合う男女の人形を眺めたり、覗き穴から女風呂を覗いたり、ハンドルを回してマリリンモンローのスカートをめくろうコーナーで頑張ったり。これ以上の描写は自粛するが、なにせ万事がこんな調子の脱力系エロス。Sちゃんも私も、早くここから出してくれーって感じの精神疲労に襲われはじめる。とにかく秘宝に次ぐ秘宝のオンパレードで、全てのフロアを回る頃にはぐったり。どれくらい疲れていたかというと、みやげ売り場でうっかり「四十八手イラストハンカチ」を買いそうになったくらいだ。危ない危ない。

そんなわけで、マイナスのオーラを浴びまくって秘宝館を後にした私たち。最後は駅近くのおしゃれカフェに立ち寄り、おしゃれドリンクを飲みながらあれこれと話す。話題は主に、迷える恋路、仕事のこと、そして大河ドラマ篤姫」について。Sちゃんは篤姫(っていうか家定)ラブのあまり彼らの菩提寺にお参りに行ったらしい。ドラマのセリフを真似てはキャーキャーと悶えるうちに「死んだ将軍萌え」という新たな属性が発動。「徳川将軍15代の中でも夫婦で同じお墓に入ってるのは13代家定と14代家茂だけらしいよ」「なんというラブラブカップル!可愛いなあ!」かくも楽しく、秋の日は暮れていくのであった。

帰りは駅で別れて電車に乗る。楽しい1日だったなあ、行きたいところにうまく回れて良かったなあ、Sちゃんは熱海を気に入ってくれたかなあと考えていたところでちょうどメールが。

 

「回った順番のせいか、熱海=秘宝館という思い出になりそう」

 

おいおい、天ぷらは、ビーチは、別荘は、カフェは、どこへ行った??と思いつつ、残念ながら私もまったく同じ気持ちだよ。哀愁さえ感じさせるB級エロスの世界。ベタな感じが好きな人は、話のタネにどうでしょう。