旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


いざ登山、日本で一番低い天保山へ@大阪

1泊2日で大阪へ行ってきた。家族で観光旅行。

海遊館、たこ焼きとお好み焼き、大阪城港から水上バスなど定番コンテンツをなぞりつつ、予定外というか予想外に楽しかったのが、日本一低い山として知られる天保山の山頂を踏んだこと。標高4.53メートル。日本一高い山には何度も登ってるけど低いほうは初めてで、最高&最低のダブル登頂を果たしたおもしろさに興奮した。

と言いつつ、実は天保山、現在は日本で二番目に低い山なのである。国土地理院の地形図に山として掲載されているという条件において、かつては間違いなく一位だった。ところが2014年に仙台の日和山にその座を明け渡している。でも条件を変えて「二等三角点がある山」という言い方をすれば、その中では今も日本一。定義や背景をめぐるストーリーも含めて興味深い。

これがその、重要にして貴重な二等三角点。

山頂までは、ゆるやか~な坂道をえっちらおっちら登っていく。所要時間20秒くらい。低すぎて地味すぎてそこが山頂であることに気づかない人が多いため、そんな不幸な山岳遭難を防ぐための山岳救助隊(案内人)も存在するそうな。町おこしの一環らしいけど、洒落がきいてておもしろいなー。

そのほか、子の熱烈な希望により運転手不在の自動運転鉄道ニュートラムに乗ったり、夫の熱烈な希望によりホームと線路の数がべらぼうに多い阪急梅田駅ホームに行って複数列車の同時発車・同時入線をひたすら愛でたりした。どちらも非常に見ごたえがあり鉄の琴線にガンガンに触れまくり、動画を撮りまくった。そんな感じでメジャーどころとマイナーな趣味とを織り交ぜた1泊2日。詳細はまたおいおい。

 

 

2017年秋、白山登山と天空の池めぐり(2)

白山登山の2日目。1日目の記録(別当出合~室堂ビジターセンター)はこちら

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室堂の山小屋ではあまりよく眠れず、ふと目が覚めて(いま午前1時くらいかな、眠れないし早く朝にならないかなー)と時計を見たらまだ22時。消灯の20時から2時間しか経ってないし。そのあともうつらうつら、じっと夜明けを待つ。

日の出の5:46にあわせて準備をして、外に出る。ここまで来たら山頂まで登ってそこで日の出を待つっていうのが王道なんだけれど、日の出前の登山って暗いし寒いし気分が乗らないので、我々は小屋の前にて待機。東側が広く開けていて、じゅうぶんにいい眺めだった。山頂にいる大勢の人のシルエットも見えて、彼らが日の出を見て「バンザーイ」という声が聞こえてきて、その数分後に、少し下にいる我々のところでも雲海から太陽登場。

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良き朝です。ちなみに白山では、ご来光ではなく「お日の出」という言い方をするのだって。

日の出を見て、小屋で朝食を食べてからいざ御前峰の山頂へ。石垣に囲まれて白山比咩(ひめ)神社の奥宮が鎮座していた。頂上はゴツゴツだけれどまあまあ広い。ああ、一年ちょっとぶりの、登頂!のこの感覚。

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天気がよくてうれしい。北アルプスもはっきり、中央が穂高岳(また行きたいなあ)。

山頂では、「日本百名山完登」の旗を掲げている夫婦に遭遇した。聞けば今日この白山が、まさに最後の百座目なのだそう。居合わせた数名で、おめでとうございます~と拍手。熊本から来たそうで、なぜ白山を最後にしたのだろう?と思ったのだが、あとで知ったところによると、日本百名山を書いた深田久弥は石川県出身なのだね。

さて、山頂からはピストン下山ではなく、峰々の間に点在する池を見て回る「御池めぐり」へ。池の規模とか姿かたちとか、あまり調べないまま期待もせずに来てしまったのだが、この御池めぐりがたいそうステキで気に入った。

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背景には雲海。山のくぼみに青や緑の水辺。なんたる絶景。立ち止まっては、景色を楽しんだり写真を撮ったりで、もっとゆっくりしたい感じだった。万年雪の残る場所もあり、ここは悪さをする蛇を雪によって封じ込めた「蛇池」という名前。ひとつひとつの池に名前があり由来があり、それを見るのも楽しいのだった。とはいえ、風が強くて冷たくて、寒かったのも事実。

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池をめぐりながら振り返れば、山々のこの風景。「おお、大きくて広い山だなあ、いいなあ~」と、しみじみ思った。好きな眺め。

そんなわけで山頂と御池めぐりで3時間ほども費やして、下山前に割りとのんびりしちゃったぞ、と少し焦りつつ、それでも帰りのバス時刻まではじゅうぶんに時間があるので、色づき始めた紅葉を楽しみつつ山を下りたのだった。

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帰りに通った、十二曲りというクネクネ道。上りだったらうんざりしそうだが、下山時は人が少なく歩きやすかった。

白山は、三代霊峰のうちのひとつ。あとは富士山と立山で、これで3つとも登ったことになる。霊的なものや信仰はおいといて、山の感じの好みでいえば白山と立山は同じくらいの上位。白山のほうが優美(池も花も多い)、立山のほうが派手でゴツい(剣岳の荒々しい眺めとか)感じか。どちらもまたこの目で見たいし、違う季節にも行ってみたい。富士山は……、まあ、一度は登っておこうか、っていうくらいで。

2017年秋、白山登山と天空の池めぐり(1)

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白山(御前峰) @2,702m
2017年10月8日(日)~9日(月・体育の日) くもり、晴れ

◆1日目=市ノ瀬シャトルバス9:05発-別当出合9:25-10:10中飯場10:25-11:50甚之助避難小屋12:15-13:05南竜道分岐13:10-(エコーライン)-14:30室堂ビジターセンター(小屋泊)

◆2日目=5:20起床(5:46日の出)-朝食-室堂7:10-(山頂&御池めぐり)-9:50室堂10:40-(黒ボコ岩、十二曲り)-11:55南竜道分岐-12:20甚之助避難小屋12:40-13:55中飯場14:00-14:40別当出合
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一年以上ぶりの登山は、白山へ。メジャーな山だが登るのは初めてだ。今年2017年は開山1300年の記念イヤー。訪れたのは今シーズンの山小屋じまいの一週間前ということで人は少なくなかったが、歩きにくいほど混んでいるわけでもなかった。

◆行ってみての感想

・久々の登山だけどずっと苦しくなく登れた。私の体力や好みにあっているようだ

・道もいいし山頂の景色もいいし、あまり期待していなかった(というか前知識ゼロだった)山頂のお池めぐりがすごくよかった

というわけで、またぜひ登りたい山になりました、白山。やったね。

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登山ルートは複数あるが、最もメジャーな「別当出合」から。早朝出発なら日帰りもできるけど、夏ならともかく10月は日が落ちるのも早いし、なにしろ一年のブランクがあるしで心配なので、小屋泊プランにて。奥にある吊り橋を渡って登山道へ。

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ああ、登山ってこういう感じだったな、ラクなものではなかったな、それを忘れてすぐまた登りたくなるのはなぜなんだろうなと、自問が始まる岩の道。

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砂防新道と観光新道という2つの道があり、斜度やら歩きやすさから、砂防新道を選択。その名のとおり砂防工事のための車道もあって、「歩かなくても車で来られるんかい!」と思うが、まあ、それはそれ。工事ご苦労様です。

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途中、ぽかりと開けた緑地に小屋が見えたりして、なんともチロル的。チロルが何なのかいまいちわかってないけど、チロル的~!って思いながら見てた。この眺めがとても好きであった。牧歌的というか、ほのぼのとした桃源郷というか。

南竜道分岐からエコーラインに入る。ジグザグとした楽しくない登りを経て、弥陀ヶ原という開けた場所に出る。

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草原あるいは湿地と木道、という組み合わせも好み。晴れたり霧が出たりする中を粛々と進む。山頂はまだ見えない。

ほどなくして、観光新道(選ばなかった方の道)から続くルートと合流し、最後のひとのぼりで、今夜の宿である室堂ビジターセンターへ。

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定員750名という巨大小屋。この日の宿泊客は600名くらいだったようだ。

後ろに見えるのが白山の中で一番高い御前峰。そういえば白山は、単独の山の名称ではなく複数の峰の総称なのである(立山方式ね)。空は青いが、ガスが出たり風が強かったり(それにもう疲れた)で、山頂アタックは明日へ見送り。まだ早いけれど(14時30分だ)小屋でゆっくりすることにする。

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夕食は18時から。おかずの種類が多くてうれしい。デザートまでついてる(これも種類がいくつかあって、好きなものを選べる!)。食堂で向かいの席になった初老の婦人が、チャック付きのビニール袋から「ゆかり」を出してごはんにかけていた。「よければどうぞ」と言われ、自家製だというゆかりを分けてもらう。梅干しも。恐れ入ります。

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消灯前に外に出たら、星の数がとんでもないことになっていた。天の川もはっきり見えた。シャッターを60秒間ひらき、なかなかステキな写真が撮れた。手前は白山比咩(ひめ)神社の祈祷殿。神社の奥宮は、山頂にある。

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ビジターセンターには郵便局があるのだが、この日は営業期間外だった。夏しか開いておらず、その時期しかおせない風景印があるのだよね。その意味でもここにはまた来なければならぬ。 

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2016年夏、蓼科山と池めぐりと、チーズフォンデュの心残り

7月に行った、八ヶ岳のひとつ蓼科山。遠くから見る丸くてぽってりしたかたちとは裏腹に、山頂はだだっぴろい岩の広場でびっくりした。こんなゴツゴツした顔を隠し持っていたとはね。

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蓼科山の山頂。とにかく広くて見渡す限りゴロゴロの岩だらけ。その向こうには空と雲と、はるかな山々が見える。別世界の光景だ。

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岩場のふちから下を見る。前日に泊まった白樺湖北アルプスの稜線も見えた。

私にとって山登りの楽しみの絶対的一位は「山頂からの景色」なのだけれど、その気持ちを十分に満たしてくれるすばらしい場所、すばらしい景色だった。これだけ広ければ、どんなに登山者が多くても「山頂が混み合う」という事態にならない。せまーい槍ヶ岳山頂なんかだと、一帯に人がたまって並んで、写真撮影の順番を譲り合って、本当は長居したいが空気を読んで早めに下りるというようなことになる。 

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下山してから見上げた蓼科山。頂上がああなってるとは想像できん。

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亀甲池、双子池をめぐる帰り道。

帰り道の途中で体調がおかしくなった。気温の高さと陽射しの強さで暑いのに加え、自分の体がものすごく熱い。頭がぼーっとして、吐き気もしてくる。ああこれは熱中症だ。これまでにも何度かあったなこの感じ。涼しいところで休んで体を冷やせばおさまるレベルだと自覚できるくらいには、気力や意識はしっかりしていた。

でも、前日からずっと楽しみにしていたお昼の時間が、もうまったく食欲もなくて、ぐったり休憩する時間になってしまったのは今もざんねん。

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カマンベールチーズを丸ごと使ったチーズフォンデュと、野菜いっぱいの焼きビーフン。同行者がフライパンを持参していたのだ。なんて素敵なメニューなの!って、前日の買い出しのときは大盛り上がりだった。が、わたしゃビーフンふたくちとチーズひとかけらでごはん終了。首の後ろとおでこに冷却シートを貼り、池のほとりの日陰の岩にもたれて、ちょっと眠った。そしたらだいぶ復活した。

体調がしんどいとき、我慢せずに「無理、しんどい」って言えることって本当に大事なのだよね。で、一緒に登る仲間が過剰な心配やいらぬ慰めをせず、「戻りのルートをどう変えるのが最善か」を考えたり「なにひとつ気にしなくていいから休め」とだけ言ってくれるということも。

でもやはりチーズフォンデュを食べ損ねたことはもったいなかったので、秋の、もうちょっと涼しい山登りのときに再挑戦だな。山ではなく家でふつうに食べればいいんじゃ?っていう発想は、野暮というものです。

2016初夏、大谷崩と山伏登山

静岡市北部、山梨県との境にある山伏(やんぶし)に登った。標高2014m。二年前の2014年には、記念に登る人が多かったそう。

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2016年6月11日(土)うすぐもり

駐車場7:00-登山口7:20-扇の要7:35-8:45新窪乗越8:55-10:30山伏山頂(お昼)11:15-13:00新窪乗越13:15-14:40駐車場着
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山伏には、大谷崩(おおやくずれ)を通っていく。「くずれ」って、ひねりのないそのままのネーミングだが山が崩れた場所のことをいう。大谷崩は江戸時代の地震によって崩壊した場所。そしてなんと、今も崩れ続けている場所。周辺には、崩れて落ちてくる石や砂をせきとめるための砂防ダムが作られている。水を貯めるだけがダムじゃないのだね、砂があふれるのを防ぐためのダムもある。

その大谷崩を登る道(というか道なき道)は、想像以上にしんどいものであった。なにしろ傾斜が急、そして石や砂がゴロゴロガラガラしているので歩きにくい。踏ん張りがきかない分すべりやすいし、自分の足で落石を起こしかねないし。

行きは曇っていて、ずっと涼しかった。暑いのが苦手なのでこれはありがたいんだけど、しばらくすると霧が濃くなってあたりは真っ白に。行き先が見えないのがつまらないような、立ちはだかる急傾斜を見ずに済むのが気楽なような。

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足元はこんなガラガラ道

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大谷崩を進む。目の前がババーンと石の坂なんだけど真っ白で見えない

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途中は森の道を行く。霧のおかげで涼しいし、幻想的な感じも悪くない

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山頂も霧の中、展望なし!

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お湯を沸かしてスープランチ。6月中旬といえどさすがに標高2,000mを超えると寒い。下界じゃ半袖いっちょうの私だが、半袖+長袖2枚でちょうどいい気温だった。

下るころに霧が晴れてきた。くずれ部分では遠くまで展望がきくように。そしたらまあ、信じられない角度のものすごい斜面が広がっている。本当にこんなところを登ってきたのか? そして本当にこんなところを下りるの?

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伝わるだろうか、この斜度が。カメラは水平。坂の角度は45~50度くらいありそうだ。そりゃ石も転がるし砂も落ちるわ。日々崩れ続けているというのもわかる。

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こんな坂を真っ向から登れるわけはないので、細かくジグザグを繰り返しながら登る(下りる)。ジグザグ、ちまちま、スイッチバックで。底に向かって転がり落ちそうな急傾斜であるよ。

山伏、岩あり森ありで飽きない山行だった。いつものごとく、下山しながら次の山計画を考えてうずうずする現象が発生。夏の間に行きたい本命の北アルプスに向けて、ステップアップは続く。

2016年夏、北八ヶ岳・北横岳登山(後)

北横岳登山の続き。前編はこちら

北横岳山頂から下ってきて、北横岳ヒュッテのそばにある池めぐりへ。「七ツ池」と言っても実際に見られる池は二つのみ。ロープが張られて奥には行けないようになっていた。数年前のガイドブックでは紹介されているので、ロープはここ最近のものなのかもしれない。

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二つ目にして、最後の池。水がきれいです

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あたりには桜が咲いていた。時は6月、下界からしたら「今ごろ桜?」と思うけれど、例年より季節の進むのが早いのだって。いつもなら雪が残っていることもあるそうだが今年はもうないしね。

池から戻って三度目の北横岳ヒュッテを通過し、また坪庭に戻ってきた。ロープウェイの乗り場には行かない。時間も体力も余っている私たちはお隣の山にも登ることにしたのである。というわけで、縞枯山へ。途中には山雑誌で見て憧れていた山小屋もある。

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山小屋行きを示す看板。青い三角屋根のおうちが描かれている。さあそして、木道を歩いてたどりついた縞枯山荘。これ、このビジュアル! 草原の中にぽつんと建つこの外観に心惹かれない人がいますかね?

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これ、歩いてきたのとは逆方向から撮影しました。さっきの赤い看板から歩いてくると小屋の裏側に出るので、一度通り過ぎてから振り返って撮った。見た目重視で。

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栗ぜんざいを注文。友は山菜うどんを。6月上旬の北八ヶ岳はなかなか寒い。長袖3枚と手袋でちょうどいいくらいの気温なので、ぜんざいの温かさが染みる。確か800円。こんがり焼いたお餅が入ってたいへん美味しい。

お腹を満たして縞枯山へ。木の根が盛り上がった道、土が露出して滑りやすい道もあってやや歩きにくかったが、さほどの苦労もなく、あれっ、もう終わり?って感じで山頂に出た。縞枯山頂、展望ゼロ。木に囲まれたほんの小さな広場(広場ともいえないスペース)に標識が立つばかりの場所であった。

ここで折り返して下山。草原まで戻ってきて、三角屋根の小屋に別れを告げて、今度こそロープウェイの駅へ。帰りもガラガラのゴンドラでぴゅーんと下り、夏山第一弾を無事に終えたのだった。いつもなら、登っている最中に必ず一度は「登山なんてきらい」という瞬間が訪れる。一度どころか、二度も三度も訪れる。暑いだるいキツイ苦しいもう嫌だってなる。が、今回はそれが一度もなかった。最適な天気と最適なルートだったんだな。というかまあ、ロープウェイを使ってる時点で体力温存コースではあるのだが、今シーズンの夏山デビュー戦にはぴったりの場所だった。

下山後は、友人も巻き込んで長野の郵便局めぐり。急ぎの郵便物があったから、ではなく、風景印を集めるためだ。友よありがとう、感謝。気持ちの満たされた一日でした。

(おわり)

2016年夏、北八ヶ岳・北横岳登山(前)

北八ヶ岳の山々のひとつ、北横岳に登ってきた。

6月に入り夏山の季節。山の友と顔を合わせるたびに「今年はどこに登るか」という話題になっており、たるんだ身体と精神に気合いを入れるべく平地訓練(街中をひたすら歩き続けるというもの。歩いた先で甘いものを摂取することにより結果的にはカロリー過剰になるケースが多い)を行ってきた我々だが、もう平地はいいから高いところに行きたいねってことで、ロープウェイで高度を稼げるこの山へ。初めての北横岳は最高だった。疲れすぎずに森も山も草原も池も見て回れる。おすすめ。そしてふつふつと高まる、夏山に登りたい!という思いよ。

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2016年6月4日(土)くもり/晴れ 北横岳~縞枯山
北横岳ロープウェイ山麓駅9:00-山頂駅着、登山開始9:20-9:50三ツ岳分岐-10:00北横岳ヒュッテ-10:24南峰山頂-10:35北峰山頂-10:55北横岳ヒュッテ&七ツ池-12:05縞枯山荘分岐-12:15縞枯山荘(お昼)12:50-13:25縞枯山頂-14:05縞枯山荘-14:20北横岳ロープウェイ山頂駅着
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登山口までは北横岳ロープウェイに乗っていく。ゴンドラは100人乗りですって、立派。

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この日の始発は8:20、私たちが乗った9:00の便は10名ほどでガラガラだった。この翌日が八ヶ岳の開山日で、まさにこれから登ろうとしている北横岳山頂で催し物が開かれるということであった。ここからがシーズンの幕開けだもんね、前日の今日は最後の静けさかもしれないねと。窓の外に北アルプス南アルプスも見えて、いやあ久々に山に来たなあという感じだ。槍ヶ岳穂高の姿に胸の高鳴りをおさえきれぬ。

山頂駅に到着。周辺は「坪庭」と呼ばれる一帯で散策路が整備されていて、登山をしない一般の観光客も普段着のままでプラプラできるようになっている。といっても、このとき観光客は皆無だった。こんな早い時間にわざわざ来る人は登山目的だよね、みんな仲間よね。

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坪庭。石と樹木を組み合わせた日本庭園のような趣。

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ロープの支柱、これはどういうつもりのデザインなのか。友人と、「パルテノン神殿?」「なると?」と言い合っていたのだが、最終的に正解を見つけました。ずばり「ちくわぶ」、ほかには考えられない。

坪庭を抜けると登山道になる。舗装は消えて土の道に。たいした傾斜もないのですいすい進む。気温も陽射しも強すぎず、ほとんど汗をかかない一日だった。おかげで楽だった。

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途中の分岐点。助詞がちょっと変。この先にある「雨池」という池を見てみたいのだが、それはまた今度、別のルートから行けそうなときに。

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北横岳ヒュッテ。ピンバッジが可愛かったのだが写真はない。なぜなら「ピンバッジの撮影禁止」と書かれていたからだ。小屋から数分の場所に「七ツ池」があって池めぐりができる。帰りに寄ろうと決めて、このときはさっさと通過。

息切れすることもなく割と楽に山頂に到着。北横岳には二つのピークがあり、順に「南峰」「北峰」となっている。北の方が高い。まずは南峰へ。

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山頂から振り返ると八ヶ岳が真正面。この日は雲が出て空気もぼんやりしていたが、それでもこの眺め。周囲にはもちろんアルプスの山々も見えているんである。これがもし空気の澄みきった秋の日ならば一体どれほどの美しい光景なんだろう。そのころにぜひまた来たい。さらに進んでもう一つのピーク、北峰へ。

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目の前に見えるのは蓼科山。どっしりしつつも優しそうな形だ。

ここからは来た道を下る。北横岳ヒュッテを通り過ぎ、分岐点まで戻ったところでふと気づいた。「あっ、七ツ池を見忘れた」。北横岳ヒュッテのそばに点在する池、それをめぐろうねって言っていたのにすっかり失念していたわ。この時点で私たちは、なんだか知らんがほとんど疲れていない、という調子の良さ。平地トレーニングの効果か!? 山に登って戻ってきたというのにまだまだ全然歩き足りないし時間もある。よし、戻ろう。池を見よう! 迷うことなく引き返したのだった。元気。

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寒いながらも、冬こそ絶景の満観峰へ

全国各地でこれまでに記録したことのないほどの超強烈大寒波が到来!という知らせが流れる中、今年初めての登山に行ってきた。静岡県焼津市にある低山、高草山~満観峰のミニ縦走である。

福岡で路面凍結しようが沖縄で雪がちらつこうが、南国・静岡市はただひたすらの快晴。気温は低いが天候は嫌というほど安定しており、滑るとか凍るとかいう心配は皆無なのであった。ただし風は強いからなにしろ防寒対策を怠るべからずということで、インナー3枚重ね+フリース+アウターを着用、念のためセーターとダウンジャケットにホッカイロも持っていったがこれは出番なし。下はスパッツに保温機能のパンツ、ウールの靴下。あとはネックウォーマーとニット帽でじゅうぶんだった(正午の満観峰山頂、気温がちょうど0度くらい)。

 花沢の里に車を停めてまずは高草山へ、頂上からいったん下り、鞍掛峠を経て満観峰へというコース。高草山に登り始めるところがやや急なほかは、木々の中をゆるゆる歩く感じできついところはない。高草山の山頂は眺望がないと聞いていたが、ほこらがありベンチがあり富士山も見えた。まあ悪くない。満観峰へ至る道も穏やかで楽に歩ける。山頂手前の稜線で風が強くなるが、すぐに山頂に到着。そしてここからの景色は本当にすんばらしい。満観!

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満観峰山頂より。富士山の手前は静岡市街。左奥は南アルプス

これまで夏の満観峰に3、4回登ったけれど、たいした距離じゃないくせに、暑くて陽射しがあって妙に疲れる山という印象だった。が、冬はいいなあ、汗もかかないし景色もきれいだし(やはり富士山は冠雪していてこそ!)。駐車場に再び戻ってくるまで、お昼休憩も含めて5時間くらい。3時間では物足りないが7時間だときつい私には、ちょうどいい充実感だ。

このくそ寒い中で誰が山に行くのかしらと思っていたが、満観峰の頂上には先客が20人くらい。人気の山なのだなあ。カセットコンロで鍋をやる予定は寒さのために中止したので、私は水筒のお湯でカップ麺(濃厚味噌)を食した。吹きすさぶ風の冷たさに手袋をはずすことができず、「でもこの手袋、滑り止めがついてるから作業しやすい!」って調子こいていたらカップを横に倒してしまい麺やスープがこぼれる始末。あああ、私のお昼ごはんが。帰り道、手ぶくろから漂う味噌の香りが切なかったぜ。

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下りてきたところに無人販売のみかんが並んでいた。そうか甘いのか。こう言われたら買うよね、10個くらい入って150円でした、お安い!

2015年冬、無雪・絶景の竜爪山へ

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文珠岳山頂広場より富士山

 

2015年最後の登山は、静岡市北部にある竜爪山(りゅうそうざん)へ。竜爪山は薬師岳@1051mと文珠岳@1041mの二つの山の総称。山頂間は片道15分くらい。

◆ルート◆ 平山旧道入口〜気持ちのいい森の道〜穂積神社〜杉の道〜鉄階段の急登〜薬師岳(展望なし)〜文珠岳(展望最高の広場)

文珠岳の山頂は広くベンチとテーブルが8つくらいあった。山のリーダーがコンロに焼き網も用意してくれて熱々のおしるこが登場。山のおしるこの美味しさ・幸福感たるや、下界のそれの100倍以上です、マジで。

眼下には清水港、三保松原、静かな駿河湾の向こうには先っぽまでくっきりの伊豆半島が見えて、今年を締めくくるのにふさわしい、美しい眺めだった。竜爪山、いい山だったなあ。往復4時間、途中の神社にはきれいなトイレもある。この季節なら汗だくにもならず景色も良く、歩きにくいところもまったくない。

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下山後は同じメンバーで忘年会。静岡市街にあるビル屋上にテントを張った居酒屋さんにて。山仲間の忘年会にぴったり!テント内は10人が立って歩ける広さで、ストーブもテーブルもソファーも置かれめちゃくちゃ居心地がよいのであった。このテント相当高いんだろうなーと調べたら、お値段43万円! うむ。

来年も楽しい登山が続けられますように。

2015年夏、雪と花と池の白馬岳へ(2)

2015年7月の白馬岳の続き。 ◆今回のルートとひとつ前の記事はこちら

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まあまあよく寝て、午前4:45に起床。朝食は行列になるとみて早めに並び始める。窓の外には朝焼けと、後ろから浮かび上がる白馬岳のシルエットが見えた。今日はまずあのてっぺんに登るのだ。

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白馬山荘の前には、富山県と長野県のさかいめの看板があった

小屋の前からは剱岳がどーんと見えた。かっこいい。準備体操をしたら2日目の登山スタートだ。まずは白馬岳の山頂へ。小屋は山頂の直下にあり、15分ほど登ればすぐそこが山頂。たいした距離ではないのに山頂は遠かった!結果的には30分かかった。なぜなら風がものすごく強かったから。

さえぎるものがない稜線で、容赦なく吹き付けてくる強風。吹き飛ばされる!と本気で思った。つかまるものを、身を隠す場所をちょうだい! 岩の陰にしゃがみこんでブルブルと震える。立っていられない、まっすぐ歩けない、寒くて痛い。ちょうどこのとき小学校高学年くらいのグループが先生に引率されて山頂に向かって行ったのだが、いやもう、下手したら小学生みんな風にさらわれるんじゃないかと気が気じゃなかったわ。私たち3人は風の強さが恐ろしすぎて、このままこんな風が吹くのなら今日の登山はやめるしかないと覚悟したんだけど。

ともかく足を踏ん張って頑張って、どうにか白馬山頂に到着。しょっぱなから疲労。

人形はいつだって涼しい顔をしていやがるぜ。(後ろが白馬山頂の標識です)

山頂を超える頃には風がおさまり、穏やかで歩きやすい空気になった。行く手を見れば稜線がスーッと伸びている。この道をずっと歩いて行けるなんてうれしい。稜線好きとしては心が躍る風景である。

  

天気が良くて景色が良すぎて、うれしさに飛び跳ねたくなる。右の大きいのが白馬。 山が連なるなかに突然ぷかりと池が現れるのは不思議な光景だ。あれは白馬大池。あそこまで歩いて、池の向こうをまわりこんで、乗鞍岳の山頂へ、そして天狗原へ、ゴールの栂池へ。

帰り道、確かあれは池のあとだったと思うけれど、雪渓がまだだいぶ残っていて、それを下るのがものすごく大変だった。アイゼンを付けてはいても固い雪面にうまく刺さらない。すべるのが怖くて腰が引けるし、ロープをつかんでもストックをついても姿勢が不安定になる。登りの雪渓ばかりを意識していて、下りにこんな要注意地帯があるということをまったく警戒していなかった。もうちょっと時期があとなら雪が解けているのでしょうが、7月下旬ではまだまだなのね。

山が、特にアルプスが好きないちばんの理由が、「ずっと続く稜線にグッとくるから」。この晴れの白馬岳ではそれを思いっきり味わえた。稜線もそうだし、富士山も槍ヶ岳穂高も見えた。一緒に登る人がいて、稜線がたまらないねとか槍ヶ岳にしびれるねとか、また次も行こうねとか言えるのはうれしいことだ。それに、なんといっても山は逃げない。次の夏もまたそこにある。